当院では先端径5.8mmの細いスコープを使用しています(経口スコープの先端径はおよそ10mmです)。口から挿入する場合にはスコープが舌根を刺激することで嘔吐反射が起こりやすくなるため、鼻から挿入する経鼻内視鏡検査を採用しています。また炭酸ガスを使用して検査を行っています。炭酸ガスは空気よりも早く吸収されるため、検査中の不快感の軽減や検査後にお腹の張る感じが残りにくいなどのメリットがあります。
もちろん経口内視鏡をご希望いただくことも可能です。ご希望により鎮静薬を使用することもできます。
胃カメラ検査によって、胃だけでなく食道や十二指腸を調べることが可能です。
初期の胃がんや食道がんは無症状のことが多く、早期発見を目指して定期的に検査を受けていただくことが大切になります。特に下記のような方は定期的な検査を受けていただくことをお勧めします。
また胸焼けや腹痛、胃の不快感、吐き気などの症状がある方も、お薬で治すことができる逆流性食道炎や胃十二指腸潰瘍などが原因のことがありますので、一度胃カメラ検査を受けていただくことをお勧めします。
当院では大腸カメラ検査の際に鎮静薬、鎮痛薬を使用し、愛護的な挿入を心がけることで、苦痛をできるだけ和らげる工夫をしています。また胃カメラと同様に炭酸ガスを使用することで検査中・検査後のお腹の張り、不快感の軽減に努めています。
検査中に大腸ポリープを認めた場合は、持病や服薬、ポリープの大きさなどにより日帰りの切除が難しい場合を除き、その場で切除しています。
逆流性食道炎は胃酸などの消化液が食道に逆流することによって、食道粘膜があれてしまう病気です。主な症状は胸焼け、呑酸(酸っぱいものが上がってくる感じ)、げっぷ、胃のもたれ感、吐き気、喉の痛みや違和感、咳や声のかすれなどです。これらの症状が慢性的に続く場合、逆流性食道炎の可能性があります。
逆流性食道炎の要因は、食生活や生活習慣の乱れ(脂っぽい食事、過食、喫煙、アルコールの過剰摂取など)、肥満、妊娠、特定の薬物使用などがあります。また年齢とともに食道と胃のつなぎ目が緩くなったり、食道裂孔ヘルニア(胃が胸腔側にはみ出してしまう状態)が進行することも原因となります。
特徴的な症状と内視鏡で食道粘膜の荒れ具合を確認することで診断します。
治療はライフスタイルの改善(食生活の改善、食事の時間帯の工夫や食後すぐに横にならない、喫煙やアルコールの過剰摂取を避けるなど)、薬物療法(胃酸分泌抑制薬、粘膜保護薬などの内服)が主体となります。
食道がんは食道粘膜の細胞が癌化して生じますが、初期段階では自覚症状が見られないことが多いと言われています。進行すると食べ物がつかえる感じや痛み、嘔気・嘔吐などの症状が現れます。初期の段階で発見できれば内視鏡治療で切除が可能です。
食道がんは男性に多く、喫煙、飲酒、熱いものの摂取、逆流性食道炎などが発症に関わると考えられています。またフラッシャーと呼ばれる、わずかな飲酒で顔が赤くなる方も発癌リスクが高いと言われています(アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドを分解する酵素が先天的に少ないため)。このようなリスク因子をお持ちの方は、早期の段階で病気を発見するためにも、積極的に内視鏡検査を受けていただくことをお勧めします。
慢性胃炎は病理組織学的な診断名であり、その原因の80%がピロリ菌感染によるものです。慢性的な炎症により胃の出口側から入口側へと粘膜の萎縮が進んでいきます。萎縮の進行に伴い発癌のリスクが高くなります。そのためピロリ菌に感染している場合には除菌治療を行うことが勧められます。一方でピロリ菌を除菌した後も発癌のリスクがなくなることはないため、年に1回内視鏡検査を行うことが推奨されています。
主に食後や空腹時の上腹部痛や背中の痛み、嘔気、食指不振などの症状が見られます。潰瘍から出血すると黒い便や下血が見られることもあります。多くはピロリ菌の感染が原因ですが、鎮痛薬やアスピリン、ステロイドなどの薬剤が原因となることもあります。悪性潰瘍(癌の一部が潰瘍化したもの)の可能性もあるため、内視鏡下での生検検査や潰瘍の治癒を確認することも大切です。
治療は胃酸分泌抑制薬の内服です。
ピロリ菌が原因の場合には除菌治療を行うことで、潰瘍の再発リスクを軽減することができます。
胃粘膜上皮が癌化して発症しますが、多くはピロリ菌感染に伴う慢性胃炎を背景に発生します。除菌治療の普及、衛生環境の改善などによるピロリ菌感染率の減少によって、胃がんは減少傾向にあります。一方で慢性胃炎を背景としないタイプの胃がんも知られています。
胃がんは初期段階では無症状であり、進行すると腹痛や胃もたれ、お腹が張る感じ、黒色便などの症状が見られます。早期の段階であれば内視鏡治療による切除が可能です。
特に慢性胃炎のある方、ピロリ菌除菌後の方は定期的な内視鏡検査による早期発見が大切です。
スクリーニング目的の内視鏡検査で発見されることが多く、年齢とともに増加します。小さなポリープでは多くの場合、便潜血検査が陰性となります。腺腫性ポリープ、鋸歯状病変、過誤腫性ポリープなどに分類され、腺腫性ポリープ、鋸歯状病変の一部はがん化するため切除の対象となります。当院でも内視鏡検査時にポリープの性状を観察し、上記の病変が疑われた場合にはその場で切除しています。ポリープの大きさや形態、内服している薬剤などによっては高度医療機関に治療を依頼することがあります。
食生活の欧米化(高脂肪食や赤肉、加工肉の摂取)、肥満の影響などにより、我が国で増加が続いており、2013年には胃がんを上回り、男性の臓器別罹患者数の第1位となりました。
早期の段階では無症状のことが多く、進行すると便秘、下痢、血便、腹痛などの症状が見られます。早期の段階であれば内視鏡による切除が可能であるため、40歳代以降の方は一度検査を受けていただくことをお勧めします。
大腸の粘膜に炎症が起こることにより慢性的に下痢や腹痛、血便などの症状がみられる病気です。明確な発症のメカニズムは分かっていませんが、遺伝や食生活などの環境要因が組み合わさって、免疫に異常を来すことにより発症すると考えられています。20歳代と50歳代に発症年齢のピークがあり、患者数は毎年増加しています(厚生労働省の特定難病の中では患者数が最多の疾患です)。近年は高齢者で初発するケースも増えています。現時点では根治することが難しい病気ですが、薬剤によって症状をコントロールし、普通の方と同様の日常生活を送ることが可能です。また粘膜の炎症が慢性的に続くと大腸がんの発生リスクとなるため、治療により粘膜の炎症をしっかりと抑え込むことによって発癌を防ぐことが大切であり、定期的に内視鏡検査を行い粘膜の状態を確認することも重要です。
主に若年者に見られる原因不明の疾患で、口から肛門までの全消化管に炎症を起こします。
慢性的な下痢、腹痛、体重減少、痔ろう、肛門周囲膿瘍などの症状が見られます。
炎症により潰瘍が生じ、進行すると狭窄(腸の内腔が細くなる)や腸閉塞、穿孔(腸に穴があく)、瘻孔(腸と腸、腸と皮膚など別々の臓器の間に本来存在しない道ができる)などを生じ、手術が必要となる場合があります。潰瘍性大腸炎と同様に現時点では根治することが難しい病気ですが、薬剤によって病状をコントロールしていくことが目標となります。